タイトルやメニューをスキップして、内容を表示

松下政経塾




サイトマップ

更新メールニュース登録

登録

1993年度 松下政経塾報1993年度 松下政経塾報

1994年3月

保険矛盾

村井嘉浩/松下政経塾第13期生
平成2年11月に始まった雲仙普賢岳噴火は、3年以上経った今も終息の予測ができない。本災害において、土石流で家屋を流出した場合には、保険会社により満額の保険金措置が実施された。一方、火砕流で家屋を焼失した場合には、農協共済では50%(その後、30%の見舞金を追加)の保険措置が実施されたものの、民間の保険会社の場合には、わずか5%の見舞金しか支給されていない。確かに、「保険契約の約款上『地震・噴火特約』が存在しなかったのだから仕方がない」と言ってしまえばそれまでだが、火砕流で家屋を焼失してしまった被災者が焼失した家屋の住宅ローンの支払を継続しながら、一方でその火災保険金の受給もできない現状を見ると、広く浅く税金を徴収している行政サイドの措置が必要であるという気がしてならない。

ところが「自然災害による個人の私有財産や事業に係る損失損害については、何人も責任はなく、保険・共済などによって自己の責任負担で解決されるべきである」というスタンスで現行法が作られているため、行政として個人の財産形成に手を差しのべることができない仕組みになっている。長崎県や島原市などでは、それぞれ基金を設置し、こうした現行法制度の適用拡大・弾力的運用では対処できない点を補っている。

長崎県の場合、議会の承認を受け、地方公益法人として、(財)雲仙岳災害対策基金を作った。大部分を国から借り入れた資金は630億円。この資金から得られる金利と、資金の一部である義援金を取り崩したものが運用資金。この運用資金は、細かな法的制約を受けないため、財団が自主判断によって自由な運用ができる。この点を利用して、被災者個人の財産形成にまでお金を出すことを可能とした。被災者1人1人への助成額は、けっして多額とはいえないが、それらによってかなり生活にゆとりがでていることは事実だ。

仮に、国家レベルで毎年2兆円(現在の国家予算の約2・5%)ずつお金を貯めていけば、50年後には元金だけで100兆円の基金ができる。元金は、いつか見舞われる関東大震災のために据え置き、金利(年2%計算でも毎年2兆円の運用資金を得る)は災害地に配分する。各自治体ごと財団などの窓口を作ってさえいれば、被災者個人への思い切った助成が可能になるだろう。

 経済大国と呼ばれて久しい。困った時のために、タンス預金として100兆円ぐらい貯めておこうではないか。(詳細は『地域から日本を変える』4月号をお読みください)。

1994年3月執筆
ページトップへ