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1993年度 松下政経塾報1993年度 松下政経塾報

福祉大国への道
1993年7月

地方分権モデルは道州制だけではない

斉藤弥生/松下政経塾第9期生
 「日本には道州制は向かないよ。民族や文化が多様なアメリカやドイツのような国が、道州(連邦)制にを向いている。ドイツの場合は、州ごとに民族や言語も多少異なり、州が独自の憲法まで持っている。日本のような均質な社会には、市町村がより大きな力を持つ地方分権モデルのほうが適している」。こう話すのはウプサラ大学政治学部のウロフ・ペーターソン教授。彼はここ数年立て続けに政治学の教科書を出版している若手政治学者のホープだ。

 ペーターソン教授は私に左のような2つの図を見せてくれた。真ん中のくぼんだ砂時計モデルは、国と市町村が大きな権限を持つ地方分権モデル。スウェーデンはこのモデルにあたる。逆に、真ん中がふくらんだダイヤモンドモデルは、別名連邦(道州)制モデルと呼ばれ、中間自治体の州が大きな力を持ち、国と市町村の力は小さい。地方分権にも大別してこの2つのモデルがあるが、日本にはどちらが向くだろうか。

 最近の新聞報道によると「地方公務員また増加 特に高齢者・保育関係が急増」(朝日5月4日)、「市町村合併へ委員会 『3300ある市町村が半分になってもいい』(村田敬次郎自治大臣)」(同5月8日)。この流れから見えるのは、県よりも市町村をしっかりさせていくという方向性である。実際、これは次の2点から理にかなっている。(1)住民に身近な市町村がより多くの権限と責任を持ったほうが、より住民のニーズに即した行政サービスを効率的に提供できる。(2)高齢社会においては、保育や高齢者サ−ビスのニーズが急拡大するが、それらは市町村の権限である。

 つまり、急激な高齢化への対応という観点から見れば、市町村がより多くの権限と責任を持つ砂時計型の地方分権モデルのほうがダイヤモンド型(道州制)よりも日本に適している。ただ、市町村により多くの権限を任せるためには、前述のように市町村が大胆に合併し、行政能力と財政能力を大幅にアップさせることと同時に、地域住民のより厳しい行政チェック能力が不可欠だ。

 砂時計型というもう1つの選択肢があるにもかかわらず、なぜ日本では「地方分権=道州制」のように語られているのか。その理由は2つ。(1)アメリカ以外の国の地方自治制度について、日本であまり紹介されていない。(2)経済的な視点に片寄りすぎ、生活関連サ−ビス(高齢者福祉や保育の充実)の視点が欠如している。

 地方分権という方向性は、最近日本の流れとなりつつあるが、その中身についても今後より具体的に詰めていく必要があるだろう。

1993年7月執筆
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