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1993年度 松下政経塾報1993年度 松下政経塾報

1993年7月

リトル・ガンジー(アリアラトネ博士)「心の講座」(1)

Dr. A.T.Ariyaratne・文責:編集部
 私たちは宇宙船よりロケットより速いもの、世界一速いものよりもさらに速い心を持っています。

 私たちは家に帰ろうと思った瞬間、精神はもう家に帰っています。心はもう家にあり、家族とともにあります。心が肉体よりずっと速い。

 大事なことは、心、精神の持っている偉大な力というものを、自分自身が何を欲するかに基づいて使う。それが大事です。

 心とは、気の違った猿と言えます。これを飼い慣らして言うことをきかすのは、なかなか大変です。猿を扱うときには、猿を扱わなければいけないように、心を自分の意のままに使おうと思えば、心を働かせないと心は使えません。

 そこでメディテーション=瞑想というものが重要になってきます。それでは猿ともいうべき心をコントロールできるかどうか、1分間瞑想してみましょう。

 瞑想はある姿勢をとらなくてはいけないということではありません。朝起きて夜寝るまでの間、どんな時でも、心をメディテーションの状態に置けます。練習してみる価値はあるでしょう。

 血流が良くなると思いますので、右手を左手の上に置いて下さい。背筋を伸ばしてまっすぐに。力を入れない。肩の力を抜いてゆっくりと目を閉じて下さい。

 少しだけ顔に微笑みをたたえて。リラックスして足の力も抜いて身体を感じてみて下さい。

 胃のあたりとか手とか首とか力がはいっていないかをみて、力を抜いて下さい。心を呼吸にあわせて鼻の穴から出したり入れたり、呼吸にあわせて心を吐き出したり、吸い込んだり。

 精神を鼻を穴のところに集中させて、空気が出ていく、入ってくる、出ていく、入ってくる、この空気の流れを、門番のように見つめていって下さい。

 そして呼吸に意識を向けて、息が出ていく、自然に入ってくる。この呼吸だけに意識を向けて、長い呼吸もあれば、短い呼吸もありますけれども、その呼吸に意識を向けて下さい。

 呼吸に意識を向けて、空気が入ってくる、出ていく、そこに意識を集中します。

 音が聞こえたり、光が邪魔をしたりするこがありますが、その時は「音が聞こえたな」「光が見えたな」と解釈を加えないで、ただそう感じて下さい。いろいろな記憶や考えが頭に浮かんでくることがあります。それも永遠に続く考えではありませんから、行かせてあげるのです。考えが浮かぶ、また行くのを待つ。呼吸に意識を向けて、空気が入ってくる、出て行く。そこに意識を向けて下さい。

 すると一瞬に、心の中に大きな愛が満ちてきます。心の中が愛でいっぱいになって、その時に、無知や欲求や邪悪な心から自由になっていきます。愛でいっぱいになって、どうかこの世界に生きとし生けるものがみんな幸せであるように、みんな安らかであるように、そういう愛のある気持ちで心の中を満たし、その気持ちをだんだんと宇宙に広げていく、そんな感じを味わって下さい。

 ゆっくりと目を開けて、意識しながら目を開けて下さい。

 このメディテーション、こういう修行、訓練というものを、朝夕、一定の時刻にやるです。ちょうど朝起きたら、顔を洗う、お風呂に入る。ちょうど身体をきれいにするように、心をきれいにするために、朝、夕、こういう修行をするといいと思います。歯を磨くぐらい簡単なことですね。顔を洗うのと同じこと。

 心をちゃんとみていればコントロールすることができるのです。

 こういう修行を繰り返して自分の心を見られるようになってくると、人との関係が変わってきます。町を歩いていても、バスに乗っていても、人と会って、人を見る目が変わってきます。

 例えば自分のことを怒る人がいたとして、自分が怒られて心が傷つくのではなくて、その何か言ってきた人との関係というのも変わってくるわけです。同じ共通項をもった人間として、愛を持って接することが他の人との関係でできるようになってきます。

 心を見ていられるようになれば、怒った!というのではなく、そこで止まって、なぜ怒っているのだろう?というように、心を止めてみることができようになります。その瞬間に怒りの感情というのはどこかに行ってしまうのです。

(京都政経塾の講座から)




<Dr. A.T.Ariyaratne(アリアラトネ博士) 略歴> ※いずれも執筆当時
 1931年スリランカ生まれ。「サルボダヤ運動」と呼ばれるスリランカ農村開発運動の創始者。アジアのノーベル賞といわれる「マグサイサイ賞」授賞。スリランカでは大統領と同じくらいの支持を得る。人間の精神の「目覚め」を説き続けている。
1993年7月執筆
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