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100km行軍
2004年10月

100km行軍レポート

内田善一郎/松下政経塾第25期生

 台風21号が通過したばかりの平成16年9月30日午前10時、松下政経塾のある茅ヶ崎市汐見台を出発し、24時間以内に三浦半島を自らの足で歩いて一周して帰塾するという100km行軍がスタートした。3班に分かれてそれぞれにチームワークを発揮することも研修の趣旨として盛り込まれていた。附帯する条件としては、1班4人で編成されるチーム全員でゴールしなければ、やり直し、ということもあり緊張感を抱かざるを得ない。

 開始時には24時間という一塊が眼前に立ちはだかっていた。その距離、時間、疲労度などを想像することすら容易ではない。とはいえ、5kmを1時間で歩くという勝負を20回、ひとつずつ踏破すれば終結する、というを発想のもとで5kmを丹念に積み重ね、23時間21分かけて小生の属する「は」班は無事、完歩することができた。斯かる得難き体験をさせて頂いたことに、お世話になった方々に深甚の謝意を表するばかりである。

【体力増強】
入塾1年目の塾生は毎朝6時から、塾内外の掃除と2.5kmのジョギングを早朝研修として取り組んでいる。また、剣道の稽古や体育の時間も研修カリキュラムにあり、入塾以来、体力は日毎に増強されていった。その強化された体力を客観的に測る尺度として今回の踏破は重要な意味を持ち得る。また100kmという距離感を体験的に把握できたことも今回の研修の大きな成果として挙げられる。

【精神修養】
100kmの行程の中で様々な想念が去来した。出発して数時間は台風一過の影響もあり、発汗も激しく体温も高めに推移したものと思われるが、日も傾き、秋気を帯びた海風に吹き曝され、悪寒すら覚えたのが40km地点付近であった。脂汗が額に滲み、これでもはや限界とも思われたが、仲間も同じ境遇にあることに想いを致せばリタイヤする訳にもいかない。また、3日後には祖父の三回忌の法要が予定されていたこともあり、何事も無かったように威儀を正して仏前や親戚に臨まなくてはなるまい。もちろん正座して。そう考えると足が痛いとか、吐き気がするなどといったことに心を向けるのが虚しくも思えて、自然と歩みが進んだ。また、100kmが近づいてきたかに思え始めた75km地点付近では、未明の暗さと寒さの中で静かに歩みを進めていた。しじまは研ぎ澄まされた感覚をもたらした。自らが生まれてよりこのかた愛されてきたことに想いが至り、私情が消え無心になり人知れず自然と感謝の泪が浮かんでは消えた。政経塾の五誓の一つ「感謝協力」の大切さを思い知る時間でもあった。複層的な意志の力が歩みを進めることを体験できたは一つの自信として今後の人生の難局において効力を発揮するものと確信する。

【天地自然の理】
歩みを進めることは時間と空間と向き合うことでもあった。昼夜の気温の変化、天体の運行、海風や夜風、土地の匂いなど日常ではなかなか意識しないものが身体を取り巻いた。台風一過の澄み切った空気の中で仲秋直後の月光を浴びながら夜通し歩き続けることそれ自体は一つの幸せにも思えた。海原に映える月明かりは天地自然の理を考えさせた。自らを取り巻く時空の懐の大きさや不思議さについて謙虚に想いを巡らせることができたことも今回の成果の一つである。

【御礼】
上記のような実り多き体験をさせて頂いた今般の研修に関わった多くの方々に衷心より御礼申し上げる次第である。「は」班の皆さん、榎本研修担当、同期、サポートして下さった上級生・職員の皆様、25年前に100km行軍を考案された平野先生、歩行の前に様々にアドバイスして下さった方々、挙げたらきりが無いが、この貴重な体験は様々な御高配の賜物である。この感謝の念を今後とも大切にしていきたい。(了)

2004年10月執筆
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