

創立者・松下幸之助は、「多くの問題が山積し、しかも時とともに混迷の度を増しつつある」と、敗戦の混乱から急速な経済成長を続け、世界から経済大国として認められつつある時に、すでにこうした警告を発していた。だからこそ、早急に政治を立て直し、指導者となる人材の育成が急務であるという松下幸之助の強い憂国の思いこそが松下政経塾設立の原点であった。
世界の荒波の中で、さらに日本が漂流している現状を鑑みると、いよいよ、松下政経塾の歴史的使命の真価が問われる時が近づいているように思う。歴史を顧みれば、困難な時にこそ人物は生まれる。時代が人物をつくると言ってもいい。今こそ、真の指導者、私心を捨てて日本を背負っていこうとするリーダーが求められている。
松下政経塾は「理想の日本と世界を実現しようとする堅い志を有し、心身の鍛錬に努め、人生をかけて山積する課題解決に挑む覚悟と実践力を持つ人材」を求めている。指導者の条件とは、まず、明確な志を有していること。そして、困難に挫けない元気さと謙虚にすべてに学ぼうとする素直な心ではないだろうか。「時とともに混迷の度を増しつつある」という松下幸之助の警告はますます現実味を帯びつつある。開塾以来、30年の間に塾を巣立っていった200名を超える卒塾生と共に、日本のため、世界のために人生をかけて、戦っていく同志を求めている。
松下政経塾には専任の教員も大学院のようなカリキュラムもない。あるのは理想の日本や世界を実現しようとする熱い志のみである。よって「万物ことごとくわが師」として、世間という「現地現場」を教科書として、塾生は「自修自得」していかなければならない。小手先の政策やパフォーマンスでは一時の人気や支持は得られても、抵抗や困難を乗り越えて理想を実現することはできない。「腰をすえて素志を貫き、逆境に立ち向かってこそ、他の共鳴も得られ、道は開けてくる」。こんな思いを共有できる人に松下政経塾は協力を惜しまない。
(C) 2011 The Matsushita Institute of Government and Management