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松下政経塾




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*平成22年3月に実施されました「第28期生卒塾式」における、卒塾生5名への「贈る言葉」より抜粋いたしました。

塾長の佐野でございます。当塾は本年度で創立30周年を迎えることができました。この間、多くの皆様から大変なご支援とご協力を賜りましたこと、厚く御礼を申し上げます。 今日は、二つほど皆さまに言葉を贈りたいと思います。

一つは、「常在現場」という言葉です。本来、「常在戦場」が正しい言葉ですが、私は「常在現場」という言葉を自分の座右の銘としてまいりました。常に現場に身を置いてほしい、という願いであります。どんな立場に立っても、どのような状況におかれても、現場を忘れてはいけません。現場の声は当然のこと、そこに流れている空気や、温度や、香りや、そういったものを常に感じることのできる人間になっていただきたい。進化の足音は常に現場からしか来ないと思います。

松下幸之助塾主は極めて現場を大切にする方でした。工場に入って機械の音を聞くだけで、あるいは、そこで働く人たちの雰囲気を見るだけで、その工場が儲かっているかどうか、すぐに分かったと言われています。現場にこそ解がある、解答があると思います。皆さまがこれから体験していく様々な気付きを、皆さま方の血や肉として、そして一つの理念として、さらには哲学にまで高めていただきたいと期待しております。

二つ目は、「実るほど頭を垂れよ」ということです。
松下政経塾の卒塾生も、この30年間で242名になり、社会の様々な場所で松下幸之助塾主の思いを胸に秘めながら活躍しています。しかしながら、少し気になっていることがあります。それは、松下政経塾も含めてのことでありますが、言葉遣いや態度が少し横柄になっていないかというお声を色々なところからいただいていることです。

松下幸之助塾主は、「世間は正しい」ということを、このように述べておられます。
「世間の見るところは常に正しいものだ。世の中というのは、こっちが間違ったことや見当はずれなことをやらないかぎり、必ず受け容れてくれる。自分が正しいことをしていても、世間に受け容れてもらえないなら、それは自分のやり方を変えればいい。世間の見方は正しいものだ」。

非常に素直な言葉であります。塾主は世間を非常によく知っておられた。また、世間の恐ろしさもよく知っておられた。非常に重みのある言葉だと思います。

また、昭和初期、松下電器が少しずつ大きくなって、飛躍をしようとした時の言葉に次のようなものがあります。経営理念を確立した時期でもございます。
「松下電器が将来いかに財を成しても、常に一商人たるもの、鍛練を忘れず、質実謙譲にして業務に処すること」。

大企業病に対する大きな戒めの言葉です。私は長い間一般企業におりました。そして、大変な努力で築き上げてきた信頼というものが一瞬にして崩れる恐ろしさも体験いたしました。その恐ろしさは、私なりに知っているつもりでございます。

今日はおめでたい席でもあり、多少逡巡をいたしましたが、以上二つのことを敢えて言わせていただきました。

さて、皆さま方はこの三年間、自らの限界に挑戦し、時には限界を超えて七転八倒の苦労をした方もいらっしゃいましたが、これからは、それを超える気概、自修自得につとめ、そしてさらに切磋琢磨していただきたいと思います。社会に出ますと、まず自分の思うとおりにいかないものと考えていただきたい。皆さまが政経塾の門を叩き、情熱を燃やしてくぐってきた時のその気持ちを忘れずに、それ以上の気持ちで新しい人生のスタートに立っていただきたいと思っています。

平成22年3月13日 第28期生卒塾式にて
松下政経塾 塾長 佐野尚見

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