一方、日銀によると日銀によると国内銀行の国債保有高は、昨年末時点で69兆円にものぼるという。金融機関による国債の買い増しは、リスク回避という側面と、BIS基準の達成という側面があると考えられる。資金の多くがリスクを回避しようとする反面、資金を必要としている企業が存在する。企業群に流れる資金の流れを太くしなければならないが、他方では国債などから資金の流出が急速にすすめば、経済危機に発展する危険性が強い。特に、現在の通貨・株・債権のトリプル安の状況では危険性が強い。
以上のような状況のもとで、民間企業の活力増進と国のシステム維持の双方をすすめる必要がある。その一つの解決策となるのが、国の信用と資金を民間に橋渡しする方法である。国に集中しがちな資金を民間に還流させ、なおかつ国のシステムの破綻を防ぐものである。
昨年6月の月例報告で、手形の電子決済の試みについて書いたが、今月は手形の代替制度試案について述べてみたい。
まず、現在の手形の問題点を整理してみたいと思う。
| 【図1】手形交換高の推移と不渡手形割合の推移 |
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| 【図2】年別倒産推移グラフ(帝国データバンクWeb-Pageより抜粋) |
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◆現在の手形の問題点
(1)現金化できるかどうか不確実一番大きい問題点は、支払いを受けた手形が、不渡りや倒産によって現金化できないケースがあるという事である。また、振り出された企業が、その手形不渡り分を支払わなければいけない。A企業が手形を振り出し、A企業→B企業→C企業と支払いが行われたとすると、A企業が債務不履行に陥った場合、B企業が支払いを行う義務があり、A企業、B企業ともに潰れた場合は、C企業が支払わなければいけない。こういったリスクが存在するため、多くの企業が、取引を始める前に信用調査をし、取引開始当初から多額の手形は受け取らないという。
図1から分かるように、負債総額は過去5年間急上昇している。また、図2からわかるように、不況の影響で企業間決済手段である手形の不渡り割合は、過去10年増加傾向にある。取引によって被害を被りたくないために、企業は新規取引に非常に慎重となっている。取引の活発化なしには、経済の再生はありえないし、ベンチャー企業といった取引リスクの高い企業群の成長もありえない。
(2)金融機関に支払う割引料の存在
手形の期日前に銀行に持っていけば、手形を現金化してくれる。しかし、その際、割引料を支払わなければならない。つまり、指定の期日より遡って、その手形の利子に応じて割引を行うのである。割引をする際、銀行は、手形を担保にした融資という形で、割り引いた手形の金を企業に渡し、これを手形貸付とよぶ。優良企業の手形リスクは低い。しかし銀行はその企業のリスクに見合った金利で融資を行うのが実態だという。つまり、銀行は、企業のリスクと手形のリスクの間で裁定取引をしている事になる。また、銀行が手形を割り引くリスクが高いと判断した場合(手形の裏書人にリスクの高い企業しか名前を連ねていない場合など)、割り引いてもらえない事もあるという。
(3)中小企業の振り出した手形は割引料が高くなる
中小企業の振り出した手形はリスクが大きいと見なされる。そのため、銀行に持って行き割引をする際、割引料を多く支払わなければならない。そのため、多くの企業が支払いの際に受け取る手形は、大企業の手形を望む。つまり、資金的に余裕のある大企業は手形を発行する事により運転資金をより多く確保し、逆に中小企業は、手形を受け取ってもらうのが難しいのが現実なのである。
(4)裏書すると、それだけで支払い義務が生じる
また、手形の特徴として、裏書を行うとそれだけで支払い義務が生じるというルールがある。それは、商品取引などがない場合でも適用される。そのため、不渡りを出した手形を経営者の親族などに連帯保証させる事がしばしば起こる。日本の融資制度では、人的担保を要求する事が多いが、会社組織はリスクを負うためにつくられたものであり、それを人的担保で保証するのはおかしいと思う。
(5)倒産の被害が拡大する
手形は、企業が発行するものである。そのため、商品が売れず事業の先行きに困った企業が事業資金の確保のために振り出すケースもある。取引裏づけのない、資金融通を目的とした手形は俗に、「融通手形」と呼ばれる。売上がなく、現金が入ってこなければ運転資金・支払い金などに困ってしまう。そのため、安易に振り出せる手形を一時凌ぎの資金繰りに利用する場合もある。この場合、振り出した企業が倒産してしまえば、周囲への被害は非常に大きい。
(6)手形法のため、金融業規制法では規制できない
手形債券の取り立ては、消費者金融などを対象とした貸金業規正法では規制できない。手形債券の取り立ては、手形法によるという。そのため、貸金業規正法の取り立てに比べ、事実上むちゃな取り立てが行われている。また、企業は、例え間違って裏書してしまった手形に対して不渡りを出してしまっても、銀行取引停止につながる場合もある。信用が大きく損なわれてしまうのである。
(7)回収する前に使える事
手形は、企業が現金の代わりとして支払うものだ。受け取った手形をそのまま他企業への支払いに使う事ができる。つまり、現金を実際に回収する前に使える、ということだ。従来は右肩上がりだったため、回収までの時間を稼げる借金経営は好都合だったが、現在のような先行きの分からない時代には、後払いはリスクが大きい。
(8)見ず知らずの人が自社発行の手形を手に入れる事
手形は回りまわって、自分の知らない人の所まで流れていく。だから、思いもしてなかった相手に支払いをする事になる。それがいわゆるヤクザや総会屋ということもままあり、トラブルにつながるケースもある。
(9)詐欺事件が多発する
資金繰りに追い詰められて、倒産を覚悟した企業が「取り込み詐欺」を行う事もある。つまり、手形を使い他社の製品を山ほど買い入れておいて、それを自社の手形で支払い、乱発した手形が引き落とされる前に、商品を現金化し、それをもって逃亡するというケースだ。
(10)交渉が必要である
街に出回っている経営の指南書には、「代金はできるだけ現金にしてもらえ」とか「現金払いが難しい場合は、3分の1でも現金でもらえ」などといったアドバイスがある。ほとんどの場合に書いてある事が「手形をもらう時は、できるだけ大企業の手形でもらえ」という事である。支払いの際に、以上のような事を強く交渉しなければならないとのことだ。つまり、ネゴシエーションしなければリスクの高い手形をつかまされる事になるわけだ。
(11)大企業の意向が強く通る
支払い企業との力関係によって、手形の支払い期間などの条件が悪くなったりする場合が多い。支払い期間が長ければ、その分、運転資金が実質上増加するからである。その為、大企業が、下請け企業や中小企業に対して、条件の悪い手形を押し付ける事は多い。しかし、大企業の手形はリスクが少ないという事で、受け取りまでの期間が多少長くても受け取るのである。
以上のような問題点から、多くの企業が急な取引の開始や、急激な取引増加、取引企業のバックグラウンドには十分気をつけなければいけないと考えており、それが必要以上に取引を慎重にさせ、新規参入者へのハードルを高くさせていると思う。
◆手形不渡り総額
以下は、近年の手形不渡り総額の一覧である。近年、額が減少しているのは、商取引が盛んでない中、手形の発行高も減少していることが原因であるといえる。1989年 8548億円
1990年 13725億円
1991年 22440億円
1992年 16601億円
1993年 13288億円
1994年 10842億円
1995年 10875億円
1996年 9948億円
1997年 12124億円
1998年 11034億円
1999年 9701億円
2000年 7978億円
不渡り総額を、負債総額で割ってみると、
1995年 12.03%
1998年 7.67%
2000年 3.32%
このデータから、手形事故の影響が少ないと考える事は妥当であろうか。
可能性として、以下のいずれか(もしくは複合)の理由であると考えられる。
- 手形制度を使う人が減った。
- 手形事故へのおそれから、手形取引を避け、現金取引に移行している
- 近年取引は減少傾向あり、手形の流通高は減った。長引く不況で、総資産を使いきり、債務超過で潰れる企業が増えていった。
◆銀行の手数料収入
手形の割引の支払いは、企業に取っても負担である。現在では、1%後半からリスクに応じた割引料を払うという。企業が割引を行って、その手形が不渡りになった場合、企業は、銀行から手形の割引分として受け取った金額を銀行に支払わなければならない。つまり金融機関は、リスクは追わないが手数料収入は得る事ができるという図式なのである。◆現金取引に際して出てくる問題点
では、現金による振込みはどうであろうか。ならば、債権の額もそれほど増えないであろうし、企業も手形に関しての余分な労力を払う事がなくなる。しかし、以下のような問題点が出てくる。- 相手の企業を調査する必要がある
手形同様、取引相手のリスクを自身ではからなければいけない。 - 現金が振り込まれるまでの期間に損失のリスクがある。
手形同様、現金を回収するまでの期間にリスクがある。 - 運転資金が目減りする
上記2つの理由で、運転資金が目減りするのである。受け取る企業としては、現金が実際に回収されるまで使えない。支払いを行う企業としては、すぐに支払ってしまうと、その分運転資金が目減りする。つまり、取引企業双方の運転資金の目減りをもたらしてしまうのである。だが、運転資金の目減りは健全な経営ともいえる。倒産した場合も、負債総額が少なくなる。
以上のような様々な状況を踏まえ、取引を行う両者の間に、信用媒体を組み込んではどうかと考えたのである。
◆国債を廻る現在の状況
近年、国内銀行の国債保有高が増加している。1999年3月末での残高は、約30兆円。それが2年半後の2001年9月には43兆6681億円にものぼる。国内金融機関全体でみると、379兆4705億円もの国債を保有しているという。(国内金融機関の定義=中央銀行、預金取扱い基金、保険預金基金、その他金融仲介機関、非仲介型金融機関。<財務省による定義>)国債の買い増しは、リスク回避という理由もあると思うが、BIS基準の達成という理由もあるのではないだろうか。BIS基準の算定基準は以下のようなものである。
自己資本比率=(基本的項目+補完的項目−控除項目)÷リスクアセット≧8%
リスク算出の際のクレジット・リスクは、
- 0% 国債、地方債等
- 10% 政府等の保証債権
- 20% 金融機関向け債
- 50% 抵当権付き住宅ローン
- 100% 通常の貸出金
自己資本比率を高めるには、分子である「基本的項目+補完的項目−控除項目」を増やすか、分母であるリスクアセットを減らすという2つの方法がある。そのため、自己資本比率を達成するために、通常の貸出金から国債に資産を移しかえ、リスクアセットを小さくしようとする動きもみられるわけである。これは、いわゆる、分母を小さくする行動である。しかし、クレジット・リスクが理論上ゼロの国債に資産移動すると言う事は、通常の貸出金の引き上げ、いわゆる貸し渋りが起こるわけである。国内銀行の国債持ち分が増える時は、国は国債を発行できるが、国内銀行が国債を大量に売ってしまうと買い手がつかず国債の暴落となり、株・国債・通貨のトリプル安となって、経済危機に発展する事も予想される。
しかし、この状況が長く続けば、多額の資産が塩漬けされたままになってしまう。国債の買い手を増やすために、国債の金利を上げようとしても、長期国債の金利は長期金利に連動しているので、国債の金利を上げれば、企業の負担は増え、倒産の増加は必至である。現在、塩漬けされている国債の金利は非常にやすく、クレジット・リスクはゼロである。これをいかに、企業経営資金に結びつけていくかが問題なのである。
◆国債手形構想スキーム
では、現在の手形のだ代替案を国債の信用を用いて考えてみたいと思う。現在の日本では、国債が最も危険度の少ない債券とされている。支払い企業と受け取り企業との間に国債を介在させ、リスクを減らすのである。国債のペーパーレス化に関する法案が話題になっている。国債がペーパーレス化に伴い、企業間決済を現金とペーパーレス国債とで組み合わせて行おうというのが今回の試案である。現在、日本の金融機関は国債を数多く保有している。金融機関はできるだけ安全ななものに資産を移そうとする傾向があるからだ。不良債権の処理のため資金を必要としている反面、多くの資金を眠らせているのである。それを活用する必要がある。利回りを期待しての事だが、それが金庫で眠っているだけの状態であれば、その資金が使われないままの状態になってしまう。しかし、それを売るとなると、市場での国債価値は大きく下落する。国債のクレジット・リスクはゼロであるとされている。ただ、アルゼンチンのようにデフォルトしてしまう国も多い。日本国債の格付けも今や、シングルAであり、その危険性がないわけではない。国債・株・通貨のトリプル安によって、経済危機が起こる事は、広く知られている。その危険性は避けなければいけない。
その解決策として、手形に求められている信用を結びつけるのである。決済に必要な国債を短期で貸し、収益を得て破綻リスクを吸収すればよいのではないか。決済に伴う不履行状況は1%程度なので、スキームの利用金と銀行の再保険料で、手形全体の不履行リスクを吸収する事ができる。
また、金融機関の自己資本比率が問題になっているが、国債を実質的融資として活用する事で、実質的に自己資本比率を高める事ができる。(国債を売る事なく、貸出を行う事ができる)これに金融機関同士のレポ取引を組み合わせ、最終的に日銀の当座預金で決済すれば、取引を行う事ができるのではないだろうか。
では、流れを見ていく。以下、国債を介在させ決済を行うという事で、“国債手形”と呼ぶ。
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まず、支払い企業が、銀行から借りたい国債のA%(その企業のリスクにより、スコアリング方式によって決定。格付けに従い数段階にわける)を銀行に保証金として入れる。(これは、預貯金を利用可能である。)預貯金を担保に融資が行われているのと同じ図式である。そして、同時に銀行は、政府系金融機関によって組織される「国債手形引受け事業団」(仮称)に再保険に再保険をかけ担保とする。また銀行は、金利、手数料を取る事で、収益を上げ債務不履行のリスクを吸収する。利用者である支払い企業は、利用料を払い「国債手形引受け事業団」のリスク引き受け原資とする。
つまり、支払い企業は、スキームの利用料金と金利、そして、取引が正常に終われば戻される保証金を求められるわけだ。
支払額のA%の現金は必要であるが、残り(100−A)%の額は、金融機関に対して国債の借り入れ金利を支払えばよいわけだ。
これで、支払い企業から、受け取り企業に取引代金が払われるわけである。図を見てもらえば分かるが、国債は、支払い取引企業の口座から、受け取り企業の口座に送金される。これは、支払い企業が取引している銀行の国債持ち分から受け取り企業が取引している銀行の国債持ち分に移った事を意味し、それぞれの銀行が日銀に持っている当座預金において決済されるわけである。その際、レポ取引を組み合わせても良い。
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手元のキャッシュフローの潤沢な大企業は、国債借り受けの金利を負担したくないかもしれない。しかし、現実には、キャッシュフローが不足している大企業も多い。実際、ここ数年でいくつもの一部上場企業が潰れた。不況の時は国債金利が安いので、こちらに借り換えが進む事があるかもしれない。景気が良くなると、国債金利が上がるので、自社の社債や株式から資金調達するかもしれない。大企業は債務不履行リスクが少ないので現金で支払ってもリスクは低いといえる。これは、中小企業向けの支払いリスク補完措置であり、また中小企業の支払い受け入れ支援、取引獲得措置であるといえる。銀行から借りた国債の返済方法であるが、
- (1)決済時に返す
- これは、支払い取引が少ない場合である。次の取引の際、改めて借りる事になる。
- (2)決済時の後、しばらくして返す
- ただ、返す時期が遅れると債務保証のリスクも高まるため、利子支払いが求められる。
- (3)毎月(もしくは数ヶ月ごと)まとめて返し、決済時に新たに借りる
- 銀行の融資の方法に似ているといえる。数ヵ月後との財務状況に応じて、保証金の割合などを指定でき、財務を見ながらリスク管理もできるので、銀行としてもこれが便利であろう。
- (4)当分返さない(一定額プール+その都度に応じて)
- 大企業であれば、支払いと受け取りの取引数は非常に多い。その度に、国債を借りていては面倒なので、それぞれの企業が、各行に借り入れ国債分の枠を持っておき、その利子を支払っていればよいのではないか。つまり、リスクが少ないため、一定割合をプールしておくのだ。それに加え、銀行の与信を受け、企業は決済用の国債を自動的に借りる事ができる。そして、大きな取引の際には、それを組み合わせて使用するのである。
このスキームは、支払い企業企業が、国債借り入れにて支払いを行うわけだが、決済後に金融機関への返済を行う際に時間差が生じるため、差額が出る事が予想されるが、これを誰が負担するか。
- (1)各企業負担
- 支払い企業が自己負担するという事も考えられる。
- (2)仲介銀行負担
- 仲介する金融機関がそのリスクを負担し、手数料を取るという方法も考えられる。
- (3)第3者機関負担(先物会社など)
- 第3者金融機関が、売掛債権の流動化などを行って、リスクを取る事も考えられる。支払い企業の損益に密接に関わる事項だけに、この点は十分検討する必要がある。
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そうすれば、関係団体は以下のような負担ですむ。(以下の数字は、取引総額に対する割合である)
国債手形引受け事業団 8%
銀行 2%
受け取り企業 10%
そうすれば、事業団と銀行とで、自己取引の総額に対し取引10%の負担率になる。
債務不履行にともない銀行の負担は必要である。そうしなかれば、リスク判定が甘くなる事が予想されるからである。ただ、負担が大きすぎると、リスク判定が厳しくなる事が予想される。いずれにしても、銀行は国債貸出料と手数料収入を得る事ができるため、債務不履行に伴うリスクは十分に吸収でき、手形の割引料で得ていた収入を得る事ができる。
ただし、政府系金融機関は再保険の役割を務め、リスク判定側にまわるべきではないと考える。1つには、民業を圧迫すべきではないという事、もう1つの理由は、政府系金融機関は審査が比較的甘いと言われているので、リスク把握を誤る可能性が強いからである。
このスキームは、金融機関の協会もしくは、いくつかの金融機関の連合体で運営してもよい。ただ、その場合のリスクは、金融機関は潰れる可能性があるということだ。そのリスクをスキーム全体にのせなければいけないので、やはり、政府系金融機関からなる国債引受事業団によって再保険が行われる事が望ましいと考える。
「スキーム全体において」
では、スキーム全体において、各関係団体が負うリスクを考えてみよう。現在の手形の事故率が1%なので、このスキームにおいて、事故率を2%と仮定すると、その負担リスクの割合は、
再保険 0.8%(利用料と再保険料によって、なりたつが、いずれも支払い企業の負担である)
銀行 0.2%
受け取り企業 1%
となる。ただ、実際には、再保険の原資を当初に募るため、その運用益を再保険料に使えば良いので、いずれの割合も下がる。
◆メリット
では、このスキームによって、考えられるメリットを見ていこう。(1)国債を介在させる事によるリスク吸収
国債を介在させる事で、受け取り企業は被害額を減らす事ができる。取引に関するリスク状況を改善する事で、従来、取引リスクの理由から取引を断られていた中小企業が取引を得る機会が増えるのではないだろうか。また、自社で取れるリスク金額は決まっているので、より多くの取引のリスクに対応する事ができる。
(2)売掛債権の証券化
売掛債権の証券化という可能性がでてくる。明海大学教授の高月氏は、債券流動化の必要条件について以下のような項目をあげているが、金融機関が求める取引コスト負担と企業の求める取引コスト負担の軽減との間をつなぎ、証券化を行う事もできる。
- 対象貸出の信用力が高いこと
- 機関、金利、担保の有無や種類などの貸出条件が比較的均質であること
- 貸出金利が高いこと
国債マーケットの新規流通市場をつくることができる。ただ、財務省によると、現在、国内銀行が保有している国債残高は約43兆円弱である。証券会社、保険会社などの参入を述べたが、金融機関全体で379兆余りの国債がある事を考えると、このスキームを通じて国債新規購入の需要がでてくるかどうかは考慮の余地がある。
(4)レポ取引の活発化
国内銀行が保有している国債残高は約43兆円弱であるが、年間手形の交換高が、100兆円超になる事を考えると、証券会社・保険会社など他の金融機関との間で国債の貸し借りが行われる事も考えられ、国債の貸し借り取引であるレポ取引が活発化する事が予想される。
(5)企業運転資金の実質的増加
債券の一時貸出により、金利利益が見込める銀行は、受け入れる保証金の割合を減らし、貸出国債の割合を増やそうとする事が予想される。
一方、リスクの少ない企業は、保証金を減らし、金利を払って利用できる貸出国債を使って支払いを行おうとするであろう。そうすれば、少ない金額で実質的取引を行う事ができ、企業の手元資金が増加し、手形のメリットである「取引日−支払い日(支払い企業の場合)」「受け取り日−回収日(受け取り企業の場合)」という時間差によって手元流動性資金量を高め、運転資金を実質的に増やす事と同じ働きをする。
また、手形と違い、回収に際して、関係機関の負担割合を確立する事で、スムーズに回収が行われるため、財務状況の改善につながる。割引料を払う必要がなくなる事は、受け取り企業財務にとって大きなメリットではないだろうか。
(6)銀行の手元流動性資金の実質的増加
塩漬けされていた国債を決済に使う事で、その分だけ決済に必要とされる資金に余裕がでて、手元流動性資金が実質的に増加する事が考えられる。
(7)犯罪防止
先に述べたように、手形を通じた取引によって、詐欺を始めとする犯罪が起こるケースが多い。このスキームでは、そういった事を予防する事ができる。
(8)債務者の確定
従来の手形であれば、手形を持っている人間が債権者であった。その為、取引に全く関わっていない人間が債権者となる事も多かった。このスキームであれば、企業債権の際、債務者が限定されるので、従来よりも整理をしやすいであろう。
◆予想される問題点
(1)支払い企業のモラルハザード支払い企業と受け取り企業が結託して、取引の金額を不当に水増しし、支払い企業を計画倒産させた場合が予想される。これを防ぐには、銀行の与信審査が重要であり、支払い企業の財務を把握する必要がある。
(2)保証金の割合と現金取引リスクとの関係
企業の倒産リスクが高い場合は、支払い時の銀行への保証金の割合を増やす事で、保険をかけるべきである。また、スキーム使用料金の割増も考えられる。保険額の割合が大きく、負担になれば、必然的に現金決済を選ぶかもしれない。しかし、現金取引であれば、取引の際の受け取り企業リスクが高まるわけである。逆に、倒産リスクの高い企業の参加をあえて受けつければ事故率は高くなるが、社会全体の取引は円滑になる。受けつけなければ、現金取引に流れていき、現金取引において受け取り企業のリスク負担が高まる。
(3)与信を与える金融機関の判断
債券の一時貸出により、金利利益が見込める銀行は、保証金を減らして国債貸出の割合を増やそうとする事が予想される。リスクを正確に判定しなかった場合、金融機関の判定リスクと企業実質リスクのギャップがスキームに与える影響を考慮する必要がある。金融機関は、手元の資金の残高(貸出預金可能量)に応じて、そのリスク判定を変える事も予想される。
また、リスクを判断する方法としては、スコアリング方式などが考えられるが、それをスキーム全体の統一したものにするか各行に任せるかは、考える余地があるところである。というのは、各行独自の基準に基づけば、その差によって企業の銀行乗り変えが進む事もありうるからだ。また、第3者の金融機関が、各行における負担割合の差をついて、売掛国債債権の流動化を行い、そこで裁定取引(Arbitrage)を行う事ができるからである。
また、統一的な基準を採用すれば、政治的介入により、リスク判断がまげられ、スキーム全体のリスクが上がる事が予想される。それに加え、各金融機関の力関係によって、市場実態との乖離が起こる事も考えられる。よって、ここは検討する余地が多分にあると考えられる。
(4)グループ内企業を使った不正経理
これは、現在の状況においても言える事かもしれないが、グループ内企業で実態商品取引がないにもかかわらず、取引を行い、架空の財務状況をつくる企業が出てくるおそれがある。これは、現在アメリカでは、禁止されている取引(例えば、同一人物による銀行の口座間を、小切手の締め日の時間差を利用し、架空資金をつくる事など)である。従来であれば取引に対して、100%の資金が必要とされたが、このスキーム場合、支払い企業は、実体のない取り引きを行い、グループ内でA企業→B企業→C企業→A企業→B企業と(支払い企業の締め日内で)まわすうちに額面の金額だけが増えていく架空取引になる恐れがある。連結決算になり、グループ全体の財務をみれば、こういった不正は簡単に見抜く事ができると思うが、それが発覚するまでに周囲への被害額が増えるおそれがある。不正経理に対しては、厳罰を持ってのぞまなければ、企業経営の腐敗は進み、決済スキーム全体のリスクが高まってしまう。
(5)企業同士のレポ取引の可能性
国債という共通債権を使っているために、企業同士がレポ取引を行う事もできる。つまり、企業によってリスクが異なるため、取引に際して金融機関負担の少ない企業が、負担の多い企業に対してレポ取引を行う可能性である。これは、金融業の免許が必要な取引かどうかに留意する必要がある。
(6)日銀の手形買い入れオペレーションの影響
日銀の政策影響力の1つとして、マーケットからの手形の売り・買いオペレーションがある。手形が廃止され、このオペレーションがなくなる事で、日銀の影響力が減るのではないかという懸念もあるかもしれない。買い・売りオペは、市場の資金量を調節することで、金利を調整しようとするわけである。政府が、このスキームにおいて債務不履行に陥った場合の銀行引き受けリスクの数%を債務保証すると言う事になれば、それだけ銀行の手元流動性が高まり、それが貸出もしくは他の用途に使われる事が予想される。
国債は長期金利にリンクしている。国債の金利が上がれば、企業が銀行から受けている融資の金利も上がるわけだ。国債の金利が上がる事で、取引の伴う企業の金利負担が増加する事が考えられる。ただ、過去10年間のデータからして、手形による負債総額はある範囲内である。手形自体の流通量が減ったために、不渡り割合が高まったともいえる。そのことを考慮すると、景気が良くなれば債務不履行の割合が減るため、銀行の負担する再保険料、企業の負担するスキーム使用料の割合を下げる事も可能ではないか。また、事業団の原資は、おそらく国債によって運用されるであろうから、その運用益としての利子も増加する事が予想され、この事も手数料の引き下げ要因となるかもしれない。よって、支払い企業の手数料は大きな変化はないのではないかと考える。
(7)手形の新規需要について
今回のスキームに国債を用いたが、これ幸いと、他のスキームなどを考えて、国債マーケットを広げようとする動きが出てくるかもしれない。国債の発行高は、限界に近づいている事は認識しておく必要がある。
(8)国債のデフォルトリスク
国債がデフォルトしてしまえば、このスキームはストップしてしまい、現金取引に移行せざるおえなくなる。現在の国債格付けが、シングルA手前である事を考慮する必要がある。しかし、国債がデフォルトした場合、現金も紙切れ同様になる。つまり、国債も現金もリスクとしては、変わらないであろう。
(9)事務コストの増加
新しく制度を行う際には、金融機関事務コストの増加が予想される。ただ、企業が現在の手形の交渉・回収・管理に割いているエネルギーと時間を考慮し、それを省く事をかなえれば、社会全体でのメリットは大きいのではないかと考える。
(10)連鎖倒産に対応するケース
支払い企業、受け取り企業ともに連鎖倒産してしまった場合を考える必要がある。
(11)企業による裁定取引
金融機関から借り入れる事のできる国債の価値と、市場価値が異なる場合、企業が裁定取引を行う事も予想される。つまり、決済手段として扱おうとしている国債に対して投機してしまうのである。レポ取引の項目でも述べた事と同じような事が留意点としてあげられる。
(12)手形を無くした場合のマネーサプライの影響
手形を廃止した場合、それがマネーサプライにどう影響を及ぼすか、そして、どこかでその分を補う必要があるかどうかは検討の余地がある。
◆最後に
試案であるので、どれくらいの数字にすれば収益がでて、スキーム全体のリスクを吸収する事ができるかといったデータや数字など抜けている点も多いが、「信用の補完」「塩漬け国債の利用」という基本コンセプトを土台にすれば、おそらく何らかの代替制度をつくる事が可能であろう。手形の制度は、時代の曲がり角にきている。古い商習慣を引きずっていては、いつまでもその制度の持つリスクの影におびえる事になる。銀行員は、皆口を揃えて言う。「手形は奥が深い」。それは、手形法だけでなく、他の法律も様々に関わってくるからだ。しかし、企業経営にスピードと透明性が求められる時代には、簡潔な仕組みが必要なのである。
金融機関は、割引料を失いたくないために反対するかもしれないが、それに見合った割合の手数料収入が見込める事をスキーム全体で示せば、納得するであろう。むしろ、新しい金融商品を開発する余地などが出てくるため、金融機関にとってはメリットがあるのではないかと考える。
参考文献
・「国債の生産機関に係る法規制上の諸問題について」(国債の清算機関等に関する勉強会編)
参考資料
【1】2001年11月21日 Nikkei TODAY
「国債・社債の電子取引、事故補償へ基金」
証券会社と銀行は国債取引などの電子化後に予想される事故に備え、2003年をメドに個人投資家保護基金を設立する。金融機関の過失などで顧客に損失が発生し、それを穴埋めできずに金融機関が経営破たんした場合、顧客の損失を補償する。投資家1人あたりの補償上限は1000万円となる見通し。券面のない電子化した有価証券を扱う金融機関が共同で設立する。 政府は国債や社債の券面をなくし電子化する法案を次期通常国会に提出する方針。電子化で取引の利便性が増す半面、今までにない種類の事故への手当てが必要とみている。
基金の規模は40億円以上となる見通し。財源には、株式の決済を担当している証券保管振替機構(保振機構)が保有する基本金と繰越利益(2001年3月末時点で計39億5700万円)を充てる。金融機関も別途、事前に資金を拠出する。金額は今後詰める。
金融機関の経営の安定性が揺らいでいることに対応し、政府は有価証券取引の安全と利便性を向上させる方針。金融機関が誤って架空の国債などを電子的に登録、手持ちを超えて販売したときなどに備え、新たな投資家保護策が必要になるとしていた。
「金融商品に係る会計基準(Fujitsu Cyber Seminar)」(税理士 土屋栄悦)より抜粋
「現先取引」
現先取引とは保有している債券を一定期間後に買戻す条件で譲渡(売現先)、又は債券を一定期間後に売戻す条件で買い入れる(買現先)取引をいいます。
例えば、短期的に資金が必要となった場合に、金融期間から短期債人を行う代わりに、手持ちの債券を買戻条件付きで譲渡(売現先)して資金化したり、あるいは、余剰資金の運用のために売戻条件付きで債券を購入(買現先)して、保有期間分の利息を得るために用いられます。この取引は、債券を担保とした金銭の貸借関係となんら変わるところがなく、一般的にファイナンスとして行われています。
「債券レポ取引」(現金担保付債券貸借取引)
債券レポ取引は次のような仕組みになっています。
まず、取引実行日に債券の貸出者(資金の受け手)は債券を貸し出すと同時に担保金を受け入れます。反対に債券の借り入れ者(資金の出し手)は債券を借り入れると同時に担保金を差し入れます。そして、取引決済日には、債券の貸出者(資金の受け手)は債券の返済を受けると同時に担保金を返還します。反対に債券の借り入れ者(資金の出し手)は債券を返済すると同時に担保金を回収します。その時、貸借対象債券に対しては貸借料を、担保金に対しては金利をそれぞれ支払うことになります。
※日本のレポ取引とアメリカのレポ取引では取引手法が異なります。




































