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松下政経塾




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1998年度 月例レポート1998年度 月例レポート

1998年10月

韓国ソウル素描

横江公美/松下政経塾第15期生
◆日本文化開放

 ソウル金浦空港に降りた。10月の韓国は、夏の暑さが残る体には、肌寒さが心地よい。キムチの臭いを鼻はすぐに探り当てる。1時間もしたら、街を包む酸っぱい臭いに鼻は慣らされ気にならなくなるのだろう。赤いネオンの十字架が現れては消えていく。ソウルの街の渋滞は以前と比べて良くなっているような気がする。金融不況のせいなのだろう。難なくタクシーはソウル市街へと入っていく。
 ソウルの夜は相変わらず人とネオンと大声が忙しく廻っている。屋台で食事する人の声はどこまでも大きく、街頭に並ぶ鞄を値切る女性の声もどこまでも大きい。韓国人は声が大きい。人並みを避けながら歩く。私は肩がぶつかること、顔の近くで話されることを怯える。

 人だかりができている露天が目に入った。「X JAPAN」。海賊版のCDだ。アニメのCDが特に人気がある。ステーショナリーのお店にはキティちゃん、ケロケロケロッピーなどのサンリオ商品やクレヨンシンちゃんなどのアニメキャラクターが大いばりで並んでいる。ミッキーマウスなどのアメリカ産キャラクターよりも人気が高い。忘れないうちに書いておく。1998年10月7日金大中大統領は日本の文化開放を約束した。私がソウルの街についた時は、まだ日本の文化は認められていない。
 触れてはいけないと言われると触りたくなる。見てはいけないと言われると見たくなる。人間の語り尽くされてきた性である。

 若者達で溢れているお店は「放課後」と名付けられた「プリントクラブ」が10機並んでいるお店。8機は日本語で説明がある。キャラクターももちろん日本語。
 「プリントクラブが今一番お気に入り」2人の女子高生は取ったばかりのシールを貼りながら、コレクションを見せてくれた。スケジュールノートの表紙に裏にいっぱいいっぱいプリクラは貼られている。
 そういえば昨年1997年12月、大統領選挙中、韓国で一番流行っていた曲は「黒猫のタンゴ、韓国版」だったのを思い出した。

 韓国の政治家にしては珍しく若い国会議員、金民ソク(金片に易)は
「日本の文化が開放されれば日本の文化は特別の物ではなくなります。アメリカの文化のように、外国の文化の1つになっていくでしょう。そして、韓国の文化と融合していくと思います。」日本文化は韓国にとって特別な物でなくなると片言の日本語で語った。先の大統領選挙でインタビューしたときは金議員は英語で応対してくれた。
 「夏に日本の議員との交流で東京を訪れました。それから、昔覚えた日本語を思い出し始めたんです。『プライド』も一人で見に行きました。」金議員は198年代民主派のリーダーとして投獄された。その時、勉強したのが日本語だった。『プライド』については英語で「インタレスティング」と感想を付け加えた。  日本文化への開放に関する経済効果としての報告書を三星経済研究所が発表した。そこには、日本の文化が韓国に入ってきたときの大きな影響はマンガ。マンガ市場の20%が日本産マンガになると報告している。

 雨に濡れる延生大学のキャンパス。IMF台風に直撃される大学生達は就職課の前でたたずんでいる。「がんばりましょう」のポスターの中で微笑むのは「もののけ姫」。
 「日本のマンガが20%のシェアで収まるとは考えられません。50%ぐらいにまでなるんじゃないのかな」クレヨンシンちゃんが大好きな新聞記者は語る。
 「日本の文化開放」は本音の現実の後追いの政治的大義名分である。もうすでに日本文化は韓国の中にしっかりとけ込んでいる。

◆IMFから1年の街

 「IMF特別バーゲン」「IMFメニュー」IMFの管理下に下った韓国はIMFの名が至るところで見える。
 「5000ウォンが4000ウォン」うどんやさんのウィンドーに書いてある。辛いチキンの焼き肉をソウルの日本人駐在員と食べた。空席が目立つ。
 「ひどいね。昨年の12月に比べても断然悪いね。日本人も減ったね。」
 投資会社の常務知り合いに連絡を取りたかった。ソウル大学を卒業しスタンフォード大学でマスター取得、投資会社のトップにヘッドハンティング、バブルの英雄の履歴をを持つ金さん。若手エリートの勉強会も主催していた。連絡が付かなかった。会社は整理されていた。アメリカサイズのマンションに招待され金さんと夫人とお手伝いさんが作ってくれた家庭料理を楽しんだことを思い出した。
 「ストレス発散が必要だからね。同僚と飲みに行く回数は減らしていないよ。でも、注文する料理が3割ぐらい減らしているよ。」ビールバーで隣に座った大手企業のサラリーマン。
 「給料が一律2割カットかな」大手マスコミ記者。
 IMF調査団が乗り込んできた昨年11月。失業率は2.6%だった。98年9月は7.3%157万人。年末には12%にまで増えるのではないかという予測もある。韓国の経済はますます、寒くなっている。

 

経済不況と子供達
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1998年10月執筆
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